「え!逆にいいの!?」
まさかの琥太郎くんからのお誘いに私は目を見開く。
しかも、話題の妹さんにも会えるかもしれないなんて。
「うちは全然問題なしです。黒涼からも近いんで、よく生徒会の先輩たちも遊びに来るんすよ〜。アパートであんまり広くはないんで、そこだけご了承頂ければ」
ニカッと爽やかに微笑む琥太郎くんに向かって、私はコクリと大きく頷いた。
「琥太郎くんがよければ、ぜひ……!」
こうして、琥太郎くんの家へまさかの緊急訪問が決まったのだった――。
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「えっと……。地図によるとこの辺だよね?」
私はスマホを片手にキョロキョロと辺りを見回す。
黒涼祭で出すカフェメニューの試作品を作るため、琥太郎くんの家にお邪魔をすることに決まったのがつい先日のこと。
黒涼祭まであまり時間がないため、早速、その週の土曜日に訪問が決まったのはいいものの……。
うーん……。
やっぱり、駅まで迎えに来てもらえばよかったかな?
私は道に迷っていた。
『え!俺、駅まで迎えに行きますよ!?うちちょっと路地裏で初めて来るとわかりづらいんす。それか、千歳先輩たちと一緒に来たほうがよくないですか?』
昨日、帰り際に琥太郎くんが気を遣ってそんな申し出をしてくれたのに。
『ううん、そんな大げさだよ。地図みたら、駅からも近いしこのくらい大丈夫……!』
と、自信満々に言い放った自分を責めたい気持ちでいっぱいだ。



