「そうだな〜。お前って料理できんの?」
史緒くんが少し考え、私にそんな質問を返す。
「うーん……。得意ってほどではないけど人並みくらいにならできると思う」
実際休みの日は、自分で食べる分を作ったり、簡単なお菓子作りならしたことがある。
「じゃあ、琥太郎と一緒にカフェで出すメニュー考えて。特進科はただでさえ人数少ないから、手分けしないと回んないし」
史緒くんの言葉に素直に頷きつつ「琥太郎くんって、料理得意なの?」と壁に寄りかかって話を聞いていた本人に尋ねた。
「俺も得意ってほどではないすけど。俺ん家、親が離婚して母親だけしかいなくて。仕事も忙しいから基本夜遅くにしか帰って来ないんすよね。で、3歳下の妹がいるんですけど、母親の帰りが遅い時とかは妹のご飯作ってやったりとか昔からしてたのでそれなりにはって感じっすかね」
いつもの調子でゆるく答える琥太郎くんに目を見張った。
「だから、黒涼の特進科はありがたいっすよ。学費免除で金もかからない。しかも、昨年の優勝賞品の学食3ヶ月食べ放題とか夢のようで……!」
うっとりとした表情を浮かべる彼に私も「そうだね」と相づちをうつ。



