「そうだな。あと気になるのは、体育科の黒涼祭参加についてか……」
千歳のひと言で、一気にその場の空気が重くなる。
「去年は、たしか体育科不参加だったんすよね?」
その空気を感じ取れていないのか、キョトンとした表情で問いかける琥太郎くんに対して。
「まぁね。でも、体育科は南翔の支配下だから。アイツの気分次第でどうとでもなる」
「ま、うちのおば……理事長は、体育科も含めて、全校生徒参加してほしいみたいだけど」
伊緒くん、史緒くんがそれぞれ答えてくれた。
私もそんな皆のやり取りを見つめ、ふいに先日の南翔くんとの一件を思い出す。
そういえば、この前あった桃苑女子校の……心葉ちゃんは大丈夫だっただろうか。
南翔くんのカノジョだとキラキラした笑顔で名乗っていた心葉ちゃん。きっと、彼女は、本当に南翔くんのこと好きで一緒にいるんだろうなと、なんとなくわかった。
でも、南翔くんは……。
『……俺、冗談とか言ったことあったっけ?』
そう心葉ちゃんに言う冷たい口調は、到底、彼女のことを大事に思っているようには見えなくて。
去り際に見た彼女の不安げな表情を思い出すと、今でもギュッ胸が締め付けられる。



