「立栞会長〜。無事でよかったです〜。一時はどうなるかと…グスッ」

私が伊緒くんと一緒に、カフェから出てきた瞬間、ガバっと勢いよく抱きついてきたのは美心だ。

緊張の糸が切れたように、メソメソと泣き出す彼女の背中を私は優しく擦る。

その後ろで「立栞、よかった…」と有紗も安堵の表情を浮かべていた。

「伊緒先輩、お疲れ様でした。いつ戦闘が始まるのかと、俺、ハラハラしたっすよ」

「…俺は、琥太郎と違ってそういうの好きじゃないから」

「またまた…!なんだかんだ言いながら伊緒先輩がうちのメンバーの中で1番好戦的でしょ」

「…琥太郎、ウザい」

「伊緒先輩…。今日は史緒先輩並みにヒドい…」

素っ気なく言い放った伊緒くんに対して、琥太郎くんはガクッと肩を落とし小さく項垂れている。

そんな2人のやり取りに、美心はパチパチと目をしばたたかせた。

ほんの少しだけ場の空気が和んだ時。

「琥太郎くん、2人のこと連れ出してくれてありがとう…。本当に助かったよ」

と声をかけた私。

「いえいえ。立栞先輩のお友達なんだから、後輩の俺が助けるの当然ですよ」

爽やかに微笑む彼に私もつられて小さく笑みをこぼす。

ほんとに、なんて良い後輩なんだ…!

しみじみそう感じていると。

「…あの、助けてくれてありがとうございます。もしかして、あなたたちが黒涼生徒会の…?」

有紗がおずおずと私の後ろから顔を出して、伊緒くんと琥太郎くんに向かって言葉を紡いだ。

「そうっすよ。はじめまして。黒涼高校1年、生徒会会計の榊 琥太郎です。立栞先輩にはいつもお世話になってます」

「あ…。ご丁寧にどうも…。白浪女学院2年、生徒会副会長の崎永有紗です」