ポツリと、噛みしめるようにそうつぶやいた彼女は、表情は暗いままサッと南翔くんの横に移動する。
「そ?心葉の好きにしたらいいよ」
「……うん」
ギュッと南翔くんの腕をつかむ心葉さん。
その姿は、彼に嫌われたくないと必死な様子にみえた。
「行くよ、立栞」
そんな2人を横目でみつめた伊緒くんは、再度私に声をかける。
その表情は「あの子に、いくら言ってもムダだよ」とでも言いたげだった。
「うん、わかった」
店内に残る南翔くんと心葉ちゃんに後ろ髪を引かれつつも、私は伊緒くんとともにその場をあとにした――。



