「ちょっと南翔ってば、ひど〜い」
頬を膨らませて可愛らしく怒る彼女を「はいはい」と適当にあしらっている南翔くんと不意に目が合う。
一瞬、彼の瞳が何か楽しい事でも思いついたかのように妖しく光った。
そして。
「そうだ。心葉、悪いけど今日はやっぱり立栞といるわ。だから、約束はまた次回ってことでもいい?それに俺、有紗ちゃんと美心ちゃんとも、もっと話してみたいし」
心葉ちゃんから離れ、空いている席に腰を下ろした南翔くんは、悪びれた様子もなくそんなことを言ってのける。
「……え?南翔冗談だよね?今日は、心葉といる約束の日だったのに」
さっきまで楽しそうに笑っていた彼女も、突然の南翔くんの言葉に困惑したような表情を浮かべている。
「ん?俺、冗談とか言ったことあったっけ?」
「南翔…っ!」
「ハァ……。俺、聞き分けの悪い子は嫌いってわかってるよね、心葉?」
めんどくさそうにため息をつきながら心葉ちゃんに声をかける南翔くん。
その冷たい口調は妙な威圧感があり、反論のスキを与えない。
「……ッ」
傷ついたような心葉ちゃんの様子を見て、居ても立っても居られなくなった私は気づけば。
「南翔くん、さすがその言い方はないんじゃない?あなたのカノジョなんでしょ……?」
と、つい口に出してしまっていた。



