"いなくなった時ツラくなるでしょ?"

意味深な言葉を残し、南翔くんは、鼻歌交じりの軽い足取りで特進科の教室を去っていく。

「……」

そんな彼の後ろ姿をジッと見つめている千歳は、何か思い詰めたような暗い表情を浮かべていて。

「チッ…」

「…ッ」

伊緒くんは、イラ立ったように舌打ちをしているし。
史緒くんなんかは、見るからに元気がない。

そんな最悪な空気の中、「ちょっ…!今、そこて澄川先輩とすれ違ったんすけど、いったい何が…!?」と遅れてやって来た琥太郎くんだけが状況をのみこめないまま、1人騒ぎたてていた。

南翔くんと、千歳たちとの間にいったい何があったんだろう…。

不意に聞いてしまいたい思いに駆られたが、まだ知り合って日が浅い私にそんな大事な話をしてくれるとは到底思えなかったし、逆の立場なら深く踏み込んでもらいたくない可能性もある。

まだ私が踏み込んでいい話題じゃないということだけは、漠然と理解できた。

ねぇ、千歳、伊緒くん、史緒くん。
いつか3人の方から話してくれるかな…?

未だに黙り込んでいる彼らを横目に私はそんな思いを抱く。

そして、彼らの間に何があったのか、私が真実を知ることになるのはもう少し先の話ー…。