「へぇ。史緒、やればできるじゃん。それに女嫌いなのに、西藤さんはわりと大丈夫みたいだね。安心したよ」
「べつにー。コイツがあんまり女っぽくないから、まぁ、そのへんの奴よりはマシってだけ」
少し驚いたような伊緒くんの言葉に、史緒くんは不機嫌そうにそう反論した。
女っぽくないという言葉には、若干引っかかる所もあるが…。まぁ、そのおかげで彼とコミュニケーションがとれるならよしとしよう。
そんなことを考えながら苦笑いを浮かべていると。
「…立栞、第2校舎のこと聞いたんだな」
いつになく真剣な表情で、私を見据える千歳に思わずドキッとしてしまった。
もし共学になった時、白浪女学院の男慣れしていない生徒には、千歳の存在は刺激が強すぎるのではないかと今から心配になる。
そのくらい絵になる男だ。
「体育科の人たちには、千歳も手を焼いてるんだってね。大丈夫…!心配しなくても、ここに通う間は気をつけるし。わざと第2校舎に近づくとか、そんな無謀なことするタイプじゃないから」
笑顔で言い切る私を見て、「そうだな」と安心したような表情を向ける千歳。
しかし、この1週間後。
まさかあんな事件が起きようとは、この時の私は予想もしていなかったんだー…。