焦ったように伊緒くんに詰め寄る琥太郎くんは、そんな悲痛な叫びをあげている。
「は〜?そんなことねぇだろ。なぁ、琥太郎?」
「いやいや!もう史緒先輩、すでに普段と口調が違いますって。てか、半分脅し入ってますよね!?立栞先輩もそう思いません!?」
私の背後にバッと隠れ、怯えたような眼差しを向ける琥太郎くんに私は「あはは」と苦笑いを浮かべた。
私、史緒くんとは初対面だし、普段の様子知らないんだけどなぁ。
それに女子の平均身長くらいしかない私の背後に隠れた所で、全然隠れられてないし……。
でも、なんだか琥太郎くんがいるとその場の空気感が若干和むのを感じ、ほっこりする。
きっと、黒涼生徒会のイジられキャラ件、ムードメーカーなんだろう。
そう。うちで言うと美心みたいな感じなのかも。
そう思って、クスッと、小さく笑みをこぼした時だった。
「琥太郎、ちょっと離れて」
「えー。千歳先輩までひどいですよ〜。そんな強く引っ張らなくても……。いてて、痛いっす!わかりました!離れます!離れますから!」
私の隣を歩いていた千歳が、琥太郎くんを無理やり遠ざけようと腕を掴んで引っ張ったのだ。



