私の問いかけに心葉さんの表情がくもる。
そして、ひと呼吸置いて彼女は小さく首を横に振った。
「⋯⋯ううん。あの日私が聞いたのは、あなたを捕まえるってことだけ。南翔、全然、自分に関することとか側近の人にも話してないみたい。ゴメン、私じゃ何も役に立たなくて」
申し訳なさそうにつぶやく心葉さんに向かって、今度は私が首を横に振る。
「そんなことない!心葉さんが助けてくれたおかげで私、今、無事なんだよ。だから、本当にありがとう」
ギュッと彼女の手を握り、私は心からの感謝を伝える。
そんな私の行動に心葉さんはようやく少し落ち着いたように見えた。
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「とりあえず本校舎に戻らないと。今頃、有紗が特進科メンバーに私が連れ去られたこと報告してるだろうし。心配してるかも……。心葉さんは危ないからもう少しここに隠れててね」
カチャッとドアノブを回し、扉の隙間から外の様子を確認する。
シンと静まり返った廊下には人の気配は感じない。
やっぱり、体育科の生徒たちの多くが本校舎の方に行ってしまっているみたいだ。
再度様子を確認し、私がバッと飛び出そうとした瞬間、
「……立栞、気をつけてね」
心葉さんが震える声でそうポツリと言い放つ。
「心葉さん、ありがとう。行ってくるね」
そんな心葉さんに向かって、私は彼女を安心させるようにニコッと優しく微笑んだのだった。



