「女だと思って手を抜いたら、つけあがりやがって……。それにさっきはよくも俺に恥をかかせてくれたな。ほら、おとなしくしてろ!」
グイッと、強引に私の腕を引っ張る橋本という男子生徒。
「いたっ……!はなして!」
予想以上に強いその力に私はされるがまま。
できる限り抵抗してみるが、力でかなうはずもなく、あっという間に拘束されてしまった。
しかも後ろに手を回されたせいで、うまく力が入らない。
「ごめんね。立栞、本当は優しくエスコートしてあげたいとこだけど、隙をみせたら逃げられそうだからこのまま連れて行くよ」
いつの間にか目の前にやって来ていた南翔くんは、私に向かって優しく言葉をかける。
そして、背後にいる橋本に対して「連れてけ」と短い命令をくだした。
「じゃあ、立栞。俺は1つ用事を済ませてくるから、またあとで……」
「……っ南翔くん、何でこんなことを?私なんか捕まえたって何もならないでしょ?」
きっと有紗と美心がそろそろ千歳達に助けを求めてくれてるはず。だから、私はこの場でもう少し時間を稼がないと!
少しでもこの場にいる時間を引き延ばそうと、南翔くんに向かって必死に声をかける。
「何でかって?そんなの決まってる……」
「……!?」
次の瞬間、私の耳もとに端正な顔を寄せた彼は
「俺、千歳の絶望した顔が見たいんだ」
私にだけ聞こえるくらいの小さな声で、たしかにそう言い放った。



