私はその男子生徒の前に立ちはだかり、進路をふさぐ。
「おい、どけ!女だからって容赦しねーぞ」
息巻く体育科の生徒の1人が、私に向かって捨て台詞を吐きながら、勢いよく突っ込んできた。
あまりにも直線的で単調な動きに私は内心フッと笑みをこぼす。
これならなんとかなるかも。
私は突進してくる体格の良い男子生徒をギリギリまで引きつけ、ひらりと横に身を捻った。
「……っ、うぉ!」
すると、突然、目標物がなくなった男子生徒は、慌てたような悲鳴を上げ、スピードを緩める。
私は待ってましたとばかりにサッと足払いをし、倍はある彼の巨体を転ばせることに成功したのだった。
「な……」
「嘘だろ」
思いがけない私の身のこなしに、体育科の生徒達はあんぐりと口を開けている。
「……っ、ふふ。アハハ!びっくりしたよ。すごいじゃん、立栞。そんなに動けるなんて知らなかった!なになに?なんか習ってたの?」
そんな中でも、南翔くんだけは楽しそうに微笑んでいた。
「……合気道を昔ね」
「なるほど、合気道かぁ。体育科でもかなり体格の良い橋本を転ばせるんだから、久々にギョッとしたよ。それに、白浪の子たちとの連携も見事だったし。立栞ってやっぱりリーダー向きだよ。ねぇ、特進科じゃなくて体育科においで。俺の右腕にしてあげるからさ」
爽やかに佇む南翔くんは、平気でそんなことを言う。
しかし、予想外の勧誘だったのは、私だけじゃなかったらしい。
一部の体育科の生徒達も驚いたように目を丸くしていた。



