カフェのメニューも、先日琥太郎くんの家で試作したクレープに決まり、残すところ衣装やら当日の細かいスケジュールのみとなっていた。
衣装担当は、全て史緒くんに一任されていたため、まさか準備していたものがメイド服だったとは誰も予想していなかったらしい。
『はいはーい。俺、なんかいい感じの衣装つくるわ』
少し前にそう言っていた史緒くん。
どうやら、今回の彼にとっていい感じの衣装とはメイド服だったようだ。
……千歳と伊緒くんにとっては災難だね。
それにしても……。
「あの、史緒くん。もしかして私もメイド服を着る感じですか?」
おそるおそる手を挙げて私は史緒くんに尋ねる。
当日、一緒に参加する私もこのメイド服を着用しないといけないのかと、思わず表情が引きつった。
あまりフリフリした感じの服は得意じゃないんだけどなぁ。
「ハァ……。お前がメイド服着たってフツーすぎてつまらないだろ?だから、立栞には特別にコレ用意した」
そう言って、史緒くんは別の紙袋から衣装を取り出す。
それを見て、私をはじめ千歳、伊緒くん、琥太郎くんも「え……」と小さく声をもらした。
「これって……執事服?」
黒色のビシッとしたタキシードに、黒のネクタイ、さらには白手袋まで用意されている徹底ぶり。
「メイド服より作るの難しかったんだからな、ありがたく思えよ」



