今度はどんな私を傷つける言葉を吐くのか怖くて、耳をより強く塞ぐと林太郎がその上から手を重ねてくる。

「5秒以内に消えないと、お前のこと徹底的に潰すぞ!」 
「為末社長って爽やかに見えて乱暴な人ですね。今の迷走中のきらりなら、あなたも捨てて次は石油王に行くんじゃないですか」

 私を咎める言葉を吐いているのがうっすら聞こえて、雅紀は遠くに消えていった。

「きらり、大丈夫? 昨日も熱が出たし、今日は家でしっかり休もう」
「林太郎⋯⋯仕事は?」
「仕事より、きらりが大事だよ」

 林太郎はそういうと私の頬を包み、軽くキスしてくる。
 私は今にも彼に恋に落ちそうで怖くなった。

 彼は私にとって恋愛対象外だったから、私は彼に色々な恥ずかしい話もネタのように話してしまっている。
 今日新たに彼は私の黒歴史を彼に知ってしまったのに、変わらずに私を大切にしてくれる。

「林太郎、私のことを少しでも想うなら、キスしたり口説いたりしてこないで。私、もう恋愛とかする気ないの」
 私の言葉に彼が戸惑ったような顔になった。

 私はこのままだと彼を好きなりそうで、また傷つくのが怖かった。
 気まぐれに見える彼の気持ちが、いつまで続くか分からない。

「分かった。だから、帰ろうか」
「私は大丈夫だから、林太郎は仕事に行って! 顔を洗ったら今日やるべきことをやるから」
 私は必死に笑顔を作って強がった。

「友達としてなら、側にいても良いの?」
 私は彼の問いかけに返答を迷った。

 友達としてでも側にいられたら、彼に恋をする危険性を察知したからだ。

「友達なら良いんだよね。きらり! 今日はきらりの好きな麺類を作って家で待ってるね」
 私のおでこにキスをして林太郎が車に戻っていく。
(私、いつから麺類が好きなキャラになったんだっけ⋯⋯)

 彼の少し勘違いしがちなところが、可愛くて好きだと思ってしまった。