「そんな昔のこと忘れたし。今は好きでもない雅紀に付き纏われて迷惑してるんだけど」 
「きらりはチャラチャラした男は苦手じゃん。なのに、目立つ男を取っ替え引っ替えして、見たまんまの派手なビッチ女になってるよ」
 私は少なからずショックを受けていた。

 14年も付き合ってきてた雅紀さえ、私の見た目を派手で尻軽そうだと言っている。
(私が1番気にしていることなのに⋯⋯)

「大丈夫。俺はきらりがそんな女じゃないって知ってるから。きらりは小さなことに幸せを感じる、素敵な女の子だよね」

「私のこと分かってるようなこと言いながら、平気で傷つけてくるよね。最低だよ! 雅紀が会いに行くべきは私じゃなくてルナさんでしょ」
 彼は自分の子を1人で産もうとしているルナさんに対して、何の責任も感じていないのだろうか。

「ルナのことなんて好きでも何でもないって。きらり以上に良い女なんて俺知らないもん」

「ルナさんの事どれだけ理解してる? 私のことみたいに金づる程度にしか思ってなかった? 彼女は才能溢れる強い子だよ。自分の夢に向かって努力しながら、雅紀との子供を1人で産んで育てようとしている」

「マジかよ。ルナのやつ子供堕さなかったの? 結構、怖い女だな。俺はきらりのことは金づるなんて思ってないって。本当にきらりが好きなんだ。超美人だから、連れて歩くだけで自慢できるしな」

 私は雅紀の言葉を聞いて自分の人を見る目のなさを呪った。

 彼も私の中身なんて、きっと外見のおまけ程度にしか見てくれてなかった。

 それなのに、この世界で本当の私を分かってくれるのは彼だけだと私は思い込み彼に尽くした。

「私、本当にバカだ⋯⋯」
 私はもう彼の話を聞いていられず、耳を塞いだ。

「いや、きらりが1番だって分かってたのに浮気した俺の方がバカだよ」

 私の気持ちを全然分かっていない雅紀が勘違いして私に手を伸ばしてくる。
 その手を林太郎が思いっきり捻りあげるのが見えた。

「きらりは俺の女なんで手を出さないでくれますか? あまり、しつこくすると警察呼びますよ」

 林太郎の顔が怒っているような気がするが、視界が滲んでよく見えない。

「為末社長ですよね。今のきらりは自分を見失って、あなたと付き合ってるだけですよ。彼女はずっと俺のことが好きで俺に尽くしてきた女なんだから」

 私は雅紀が雄也さんといる私を見て、「貧乏きらり、金持ちに目をつけられて良かったな」と捨て台詞を吐いたのを思い出した。