「皆さん、すぐに逃げた方が良いですよ。ここに警察を呼びました。その飲み物の中には違法薬物が入っていたりしませんか?」

 その言葉に私を掴んでいた男が手を離し、他の男たちも慌てたように部屋を飛び出した。

「雄也さん!」
 私は思わず彼にしがみついた。

 彼が私を抱きしめ返してくる。
「きらりさん、無事でよかった⋯⋯」

「警察は?」
「あれは、でまかせです」
「流石です。雄也さん」
 私はホッとして思わず涙が溢れた。
 雄也さんが手の指でその涙を掬いながら、笑いかけてくる。

「それにしても、なんで私の居場所が分かったんですか? 」
「実は、きらりさんのカバンの中にGPSを入れて居場所を確認してました」

 私はこの1ヶ月、雄也さんと度々会っていたのを運命だと思ってた。
 しかし、それはGPSで私の位置を確認していただけのうようだ。
(何だろう、少しがっかりしてる私⋯⋯)

「渋谷雄也! お前、きらりのストーカーかよ!」
 突然聞こえた大きな声に振り向くと、林太郎が怒った顔で立っていた。
「いや、違うよ。雄也さんは私のことを心配して⋯⋯」

 おそらく雄也さんは私のことが心配でそんなことをしたのだろう。
 なぜなら、雅紀に裏切られて以来、私の精神は自分でもおかしいと感じる事が多かった。