私は親が「あいつは財産目当てだ」と結婚を反対されたのを思い出した。
 本当にその通りだったのに、なぜか反対されるほど意固地になってしまった。

「研修医! 人を大事にできない人間は医者に向いてないと思うぞ」
 恋に落ちた33歳の雄也お兄ちゃんは、梨田きらりのナイトになることに決めたようだ。

 状況が全て理解できてないだろうに、彼女の隣に寄り添いにいっている。
(私、梨田さんには酷いことした⋯⋯でも、雄也お兄ちゃんが守ってくれるなら大丈夫だよね⋯⋯)

 私は雅紀に離婚したいことを伝えた。
 彼が自分のことしか考えていない様を見て私は切れた。
 お腹に彼との子供もいるのに、彼は1度も妊婦の私もお腹の子も気遣ってくれたことはない。

 私はすぐに実家を雅紀を連れて訪ねた。
 言わんこっちゃないと軽蔑の目を向けてくる両親を頼るしかない自分に呆れた。
「さっさと離婚して、子供は堕しなさい」

 私は父の言葉に背筋が凍った。
 今日、感情のままに行動をしてしまった自分を振り返っても子供が子供を産むようなものだ。
 それでも私は自分の中で育っている子供を諦めたくない。

「俺はルナさんと別れる気はありません」
いまだ自分勝手なことを言い続ける雅紀の声が遠くに感じた。