「分かった。私も一員として入るよ。こうなったら度肝抜くくらいのパフォーマンスをしてやろう」
 そのように、上手いくらいにのせられた私は『フルーティーズ』を本格パフォーマンス集団にするべく本気の練習をしだした。
 今、定職も失い、お金もなく、人生詰んだ状況で、一周回って無敵な気もしてきた。

 三十路が中学生アイドルの中に入ったら痛々しいだろうが、今の私は客観的に見ても十分痛い大人だ。
(もう、こうなったら痛々しさを極めてやる!)

 誰に笑われても良いから、もう1度この頑張り屋の子達と頑張ってみようという気になった。

 それくらい、3人娘はピュアで一所懸命で私には魅力的に見えた。
 結局、本気を出した私は足が生まれたての子鹿くらい疲れてしまってそのまま帰宅した。
(どうしよう、ハローワーク今日も寄れなかった⋯⋯)

 定職に就かないと、月15万円の家賃は払えなくなる。
だけど、もう特訓で疲れすぎていて家で泥のように眠りたかった。

「渋谷さん、ルナさんなんでここに!」

 渋谷さんとはもう会いたくないのに、マンションの前でルナさんと一緒に明らかに私を待っていた。
(昨日は、ルナさんと私を会わせたくないって言っていたのに何で彼女を連れてくるの?)
 昨日のキスの記憶も蘇ってきて私はとても気まずい気持ちになった。