「そんな訳ないでしょ。ファンタジーランドでのデート写真を撮られたんだよ。まあ、黒田蜜柑が売名で撮らせたんだと思うけどね」

「え! どういうこと? アイドルって男女交際は御法度なんじゃないの?」

 アイドルといえば、交際でもしていた日には坊主にして謝罪したり卒業したりするものだと思っていた。
 それに、蜜柑は『フルーティーズ』のメンバーなら中学生くらいのはずだ。
 中学生が、男の子とデートするなんて早熟過ぎる。
 それに倉橋カイトは昨日の写真では18歳くらいに見えた。

「倉橋カイトは超有名だけど、黒田蜜柑なんてほとんどみんな知らないよ。おそらく、グループ抜けてピンになるから箔付けに倉橋カイトと写真を撮らせたんだろ」

「いや、年の差がえぐいけど、長く付き合ってなきゃファンタジーランドには行けないよね。アトラクションの待ち時間3時間とかだよ」
 中学生と大学生が付き合っているようなものだ。
 そんなのは漫画の世界でしかあり得ない年齢差だ。

「アトラクションにいちいち並ぶ訳ないでしょ。普通に接待して貰ってゆっくりお茶飲んでから、アトラクションに乗ってるよ」
「そっか、確かに芸能人が並んでたら騒ぎになりそうだもんね。林太郎は実は芸能通なの? よくそんなこと知ってるね」

「きらりも、アトラクションに並ばずに乗りたい?」
「いや、私は実はお喋りしながら長時間並ぶのも醍醐味だと思っているから」

 私は大学合格祝いで雅紀とファンタジーランドに行ったのを思い出していた。
 アトラクションまで4時間待ちという長さで疲れた私を、彼は自分で空気椅子を作り座らせてくれたりした。

「今、元彼のこと思い出してたでしょ。早く、忘れて次にいった方が良いよ」

「そうだね、まあ、私は恋愛はあと7年はする気はないよ。今は『フルーティーズ』のプロデュースと就職活動に全力投球しなきゃだし」

 『フルーティーズ』の3人娘はとても可愛く懸命なのに知名度がないらしい。

 知名度ナンバーワンの蜜柑とは仲違いしたけれど、3人娘は1枚岩だと信じていた。
 しかし、3人娘はそれぞれ全く違ったベクトルでアイドル活動をしていて、気持ちのすり合わせに私は苦労することになった。