「⋯⋯俺ってそんなに幼く見えるんですね。確かに、まだ自分では何もできてない気もします。俺は梨田さんともっと話したいだけだから、そんなに警戒しないでください。それに年下の俺に敬語もおかしいです。仲良くなりたいので林太郎って呼んでくれませんか?」

 私は戸惑ったように話してくる為末さんを見て、彼を傷つけたと思った。

 そして、前の会社でも男の人はよく1人で、ランチをしていたのを思い出した。

 彼のように話好きだと一人でランチをするのも寂しいだろう。

 私も図々しいかもしれないが、ランチを買ってきて貰えてここで食べられる生活は助かる。
 何よりも彼は雅紀のイケメン版のようで、親しみやすく話しやすい。

「林太郎! 私のこともきらりって呼んでくれる? 敬語もいらないよ。私の方が精神年齢幼そうだし」
「きらり! 可愛い名前だね。そういや、『イケダンズ』のファンなの?」
 林太郎が成田さんから預かったC Dを見て尋ねてきた。

「別にファンとかじゃないよ。ここで働いている成田さんから預かっただけ」
 私はアイドルに全く詳しくない。
 スポーツ以外のテレビをほとんど見ないから、このCDのアイドルの子たちも知らない。

「そうなんだ。じゃあ、この中で誰が好み?」
「いやあ、こういう若くてキラキラした子が苦手かな。有名な子たちなの?」
 この中で誰が好みかを聞かれても、全員知らないし若すぎて好みじゃない。

 つまり、私はアイドルにハマる人間の感性を持っていないということだ。
 3人娘を売り出す為にもアイドルについて勉強した方が良さそうだ。

「ちなみに『イケダンズ』はセンターにいる倉橋カイトが1番人気。貧乏OLを溺愛してくる御曹司役で人気になったんだけど知らないのか」

「私は御曹司のどこが良いのかわからない。社長の息子ってだけでだけでしょ、魅力を感じないなー」
 昔も貧乏女子高生が御曹司から溺愛される漫画が流行ったが、いつの時代も玉の輿に乗りたい子は多いようだ。
(そんな苦労知らずの御曹司とは上手くいかないと思うんだけどな⋯⋯)

「⋯⋯そうなんだ。俺はダイエットとか気にしないでポテトとか美味しそうに食べちゃう子が好きかな。あと見かけとのギャップが強い子とかも魅力を感じる」

 林太郎とは結構打ち解けられたようでホッとした。
 前は玲香とばかりお昼を食べていたが、今はどこでランチをして良いのかも分からない。

 1人で食べるよりは誰かと食べたりしたい。
 林太郎は若い割にはしっかりしているし、これからのランチ友達ができたようでその時は嬉しいと感じていた。