「そうよ、当たり前じゃない」
「しかもダンスって今、他のアイドルグループのものを練習しているんですね。その上、曲もお下がり!」

「いや、ダンスも曲も作るのってお金が掛かって大変なのよ。新曲を作ってあげる時もあるけど、ほとんどはお下がりを使ってるわ」
「じゃあ、新しいダンスや曲は私が考えて。私が3人娘に教えても良いですか?」

 オリジナル曲ではなくて売れているグループのお下がりでは可哀想だ。

「ダンスはプロの振付師に振り付けしてもらっているのよ。確かに病院で歌ってた即興曲は面白かったけれど、会社員だったあなたに何ができるの?」

「私は、チアーリーディングの日本代表でキャプテンをしていました。彼女たちにチアダンスを教え込むことができます!」
 私は高校までは、チアリーディングに全力を注いでいた。
 体が大きめだったので、リフトで小さい子をあげてよく持ち上げていた。

「え、日本代表? なんか、妙に体育会系な雰囲気があると思ったらそうなの?」
 私の言葉に慌てて友永社長がネットを検索しだす。
 そこには私が必死に頑張ってた時代の映像が出ていた。

 チアリーディングも辞めたのも、雅紀だけの応援団になろうと思ったからだ。
 本当に私は恋をすると、それが中心になってしまう愚かな女だ。
 だから、私は今後恋をしないことで、自分の為の人生を冷静に見つめ直すつもりだ。

「流石にこれはあの子たちには無理よ。アクロバティック過ぎない? なんで、会社員になったの? サーカス団に入った方が絶対よかったわよ」
 サーカス団などという進路は、芸能界と同じくらい選択肢になかった。

「昨年、札幌ソーセージのタヌキダンスが流行ったじゃないですか。私は札幌ソーセージのチアのグループだから流行らせられたと思っています。あの子たちは皆、表情があってイキイキとしていました。あんな感じを目指しますね」

 チアダンスにおいて、楽しそうに本人たちが踊るのが1番だ。
 札幌ソーセージのタヌキダンスより難しいアクロバットをする、チアリーダーを持つ球団もあった。
 しかし、分かりやすい振り付けとチアの子たちの親しみやすい笑顔の力はそれを超えた。

「あ、そうそれくらいマイルドなので頼むわ」
「あと、衣装も私の方で作成します。ミシン持っているんで」
「まあ、1回、梨田さんに任せてみようかしら。確かに衣装代やレッスン代はあの子たちにも負担になっているだろうし⋯⋯あなたって面倒見良いのね」
 私の考えは読まれていたようだ。

 私もお金が今なくて支出を抑えたいが、3人娘も決して経済的に豊かではないと聞いた。
 それならば外注せずできるところは、私が面倒をみたい。