「実はこの度のっぴきならない理由で会社を辞めまして、ここで何らかの仕事を頂ければと思いまいりました。雑用とか何でも良いのでお仕事を頂けませんでしょうか?」

「仕事!あるよ!『フルーティーズ』に入りなさい。あなたは絶対に伝説のアイドルになるわ」
「いや、ある意味伝説になるかもしれませんが、私はアイドル以外の仕事が欲しいんです」
 三十路でアイドルなんて、笑われるに決まっている。
 できれば事務仕事的なものが貰えれば良いと思った。

 就職活動をするにしても時間がかかる。
 しかし、私は雅紀に貢いでたこともあってか全く貯金がないに等しい。
 だから雑用でも良いから小銭を稼げる機会が欲しい。

「本格派の女優や歌手になりたいってことかしら? 確かに君からは嗅いだことのないマネーの覇王臭がするのよね。でも、今『フルーティーズ』は人気ナンバーワンが抜けて大変なの。あなたの歌唱力と苗字の力で彼女たちを助けてやって欲しいのよ」

 友永社長が真剣に私に訴えた後、秘書に合図を送った。
 扉が開くと3人の顔も小さく背も小さい可愛い女の子たちが入ってくる。

「彼女たちがフルーティーズのメンバーよ。あなたにはこのメンバーに入りアイドル活動を行ってもらいたいの」
 社長の言葉が幻聴だと思いたいくらい、私はその3人の中に入れる気がしなかった。
(明らかに若い! 中学生くらい?)
 168センチの私とは15センチ以上も背丈の差がありそうな、ロリロリした3人娘が私を不思議そうに見ている。

「はーい!『フルーティーズ』!自己紹介は?」
 友永社長の言葉に可愛い3人の娘が自己紹介を始めた。

「モモッチこと瀬谷桃香13歳です。あなたのハートもピンク色にしちゃうぞ!」
 バキューンポーズをしてくる彼女はサーティーン・イヤーズオールドらしい。
私はサーティー・イヤーズオールドだ。

「イチゴンこと菅田苺14歳です。今日も私のコアは真っ赤か。もう、あんまり恥ずかしいから見ないで!」
 なんかよくわからないが、ハートを手で作るのが彼女の決めポーズなのだろう。
 見ないでと言いながら見て欲しくて仕方がない目をしている。

「コリンゴこと斎藤りんご14歳です。もう、これ以上剥いちゃダメだよ!」
 ウインクしながら言ってくるコリンゴさんに私はどうして良いかわからなかくなった。

「あの、流石にこのグループの中に入るのは厳しいというのが私の見解です。そしてこのグループは売れないと思います」
 私は自分がグループに入れないことだけを伝えれば良かった。

 それでも、あまりに寒い自己紹介が痛々しくてグループが売れないだろうという余計なことまで言ってしまった。
 その途端イキイキと自己紹介をしていた可愛い3人娘たちの顔が曇る。
(こんな若い子達が頑張っているのをバカにして私は何をやっているの?)

「そう思うなら、あなたがこのグループを売れるようにして見せてよ。マネーの覇王臭のするあなたの本気を私に見せて!」
 友永社長が挑戦的な目で私を見ながら顎クイをしてくる。

「そうですね。この子たちは磨けば光り、将来的には武道館に立てる子たちです。私の覇王臭とやらの本気を見せます」
 若い頑張っている子を傷つけた罪悪感からか、私はできるかわからない約束をした。
(もう、こうなったらできるかできないかじゃないわ。やるしかない!)