恋と、涙と、先輩と

思わず胸が弾む。


〈羽賀先輩は?今いっしょ?〉

〈えっと、先輩は…〉


わたしはチラリと羽賀先輩に視線を移す。

なんとなく話を理解した先輩は、微笑みながら立てた人差し指を唇に当てる。


『俺のことは言わなくていいよ』


そう言っているかのようだ。


〈羽賀先輩は…いっしょじゃない〉

〈あ、そうなの?〉


その間に、羽賀先輩は自分のスマホになにかを打ち込んでそれをわたしに見せた。


【俺は、風邪引いてドタキャンしたってことにして】


わたしはうなずく。


〈羽賀先輩は…、急に風邪引いちゃったみたいで。これないって連絡あったの〉

〈そうなんだ。じゃあもしかして、みくり家に帰ってた?〉

〈う…うん〉

〈そっか。せっかくだし、いっしょに夏祭り行かない?〉


それは、わたしが待ち望んでいた言葉だった。