「本当は、使いたくなかった」 でも、栗田が敵だというなら。 私は、彼のためにも、やらなきゃいけない。 私は手元の機械に目を落とす。 黒く艶(つや)やかに光る、小型録音機。 私はそれを、首にかけた。 胸元に当たった録音機は、少し冷たくて。 泣きそうになったのは、外気の冷たさと録音機の冷たさによるものだと信じている。