遊ばれる、なんて嫌だ。
それなら今みたいに気まぐれで住まわせてもらっている方がいいはず。
「あ、一限体育じゃん。ほら咲良、ジャージ。着替えないと」
「あ、ほんとだ……」
閉めかけたカバンの中からジャージを取り出す。
このジャージもカバンも、昨日朝光くんが揃えてくれたらしい。
昨日、彼が家を出ていったすぐあとにインターホンが鳴って色んな荷物が運び込まれてきた。
その中で私に声をかけてくれたのは黒いスーツに身を包んだ女の人。
『鈴木咲良様ですね。朝光様のご命令によりお荷物をお持ち致しました』
『はえ、どういうことですか……、』
『明日からこの場所で生活をされるということでしたので必要最低限のものしか持ってこられず大変申し訳ございません』
『いやなんで……、私の住所とか、それに家には麗華と弘樹くんがいたんじゃ、』
『外出されているタイミングを見計らって迅速に対応致しましたので問題ありません。住所、とは朝光様であれば私から答えを言う必要もないと思います』
つまりこの街の人の個人情報は全て''黒羽朝光''には筒抜け、だとそう言いたかったんだろう。
彼女も朝光くん専属の引越し業者というものだから、ほんとうに彼の権力は計り知れない。
「おはよー!」



