「ほら、難しい話は大人たちでやっておくから。話し終わったら帰っていいぞ」




莉亜とかいう女の相手はめんどくせーけどさっさと話を終わらせるしかない。自分の感情をぐっと堪えて、そいつの家の広い庭に出る。



「5月ですもの、もう桜も散ってしまいましたね」


「……はは、そーですね」




''桜''って聞いただけで''咲良''に変換してしまう俺は相当な重症。
夜の風になびいて、淡いピンクから鮮やかな緑になりかけている木の枝がさわさわと揺れる。



ホントだったら咲良と過ごしてたのに。
……これ前のデジャブじゃん。


ニコニコしてるのもいい加減ダルい。

咲良の花がパッと咲いたような可愛らしい笑顔を頭に浮かべる。



「あ、朝光さま」


「はい」



「あの、今好きなお方などはおられるのでしょうか?」


声をふるわせて、顔を真っ赤にして聞いてくる女。



「……いますよ」