「咲良の誕生日。過ぎてるだろうなって思って」
「へ、」
誕生日、なんて。
あの家で祝われたことなんかなかったから、私には''誕生日''がなかった。
そもそも私の''咲良''っていう名前も、赤ちゃんの頃、施設に預けられた時期が春だったから、っていう理由だけで付けられた名前らしい。
春だっていうことだけは分かっていたものの、引き取ってくれた親が祝ってくれるわけもなく。
だから、咲良っていう名前が好きじゃなかった。
季節だけで決められた名前なんて、親に愛されなかった証拠だから。
誕生日なんて、今までずっと忘れたフリをしてたのに……。
「誕生日おめでと、咲良」
「……っ、ありがとう」
''誕生日おめでとう''なんて、初めて言われた。



