「……早めに終わらせたけど、井口を呼んだらお前が凪たちと遊びに行ったっていうから、そのまま迎えに来た」
淡々と言われたあとには、何も言ってくれず、車に乗せられる。
「ねえ、朝光くん。どうしたの……?」
「……なんも、」
……嘘。
頬杖をついていて、ちっとも目を合わせてくれない。
明らかに機嫌の悪そうな朝光くん。
だから目の前には悔しいほどさらさらな黒髪しか見えなくて。
私、なにかしちゃったかな……。
ずん、と心に重みがのしかかった。
私の気持ちを無視して、その間に車は発信してしまう。
気まずい空間のまま、車内にはジャズの音だけが響き渡っていた。