「それと、朝光さま。明日は午前に新渡戸様のご婚約パーティー、午後に石英文庫との商談がございます」
「……だりぃ」
「今は経営が争う時期ですからね。仕方がありません」
家につくまでの時間はひどく長く感じて、やっとの思いで家に着いたけど、俺が見たのはうずくまって泣いている咲良の姿だった。
駆け寄って無理やり咲良に話を聞くと、『俺に捨てられたのかと思った』とのこと。
俺が咲良を捨てるわけない、ということを伝えると咲良に、
「わたしが朝光くんにとってのまだ飽きてない''所有物''だから、ですか」
なんてことを聞かれた。
すぐに、答えられなかった。
俺の中でもなんでここまで咲良に執着するのか、理由が分からなかったから。
でも、少なくとも咲良のことを物とは思ってないし、飽きる気も全くしない。
だけど、そう言おうとした瞬間、井口の声がかかって答えられなかった。
咲良は多分、俺に捨てられるのが怖くてあんなことを聞いたんだろう。
俺が、咲良を捨てるわけないのに。
麗華、という女に不安になるようなことを言われたんだと推測する。
でも、俺に捨てられると思って泣いている咲良を見て、悪いと思いながら嬉しく思ってしまった。
ここで双子の妹の名前を口に出さなかった咲良を見て本当に優しい子だな、と実感する。
普通の人間なら、全部、妹のせいにして怒るだろうに。
でも、そうできなくなるような生き方を咲良に教えこんだやつがいるんだろう。
きっとそれはあの麗華、という女とその両親。
……ほんとにどうしてやろーか。



