side朝光




生まれたときから''スペア''だった。


俺の生まれた家は、旧黒羽財閥。
旧とはいえまだまだ財力、権力ともに健在な俺の家。


この街の人間には顔が知れていて、必ず誰かが媚びに来るくらいの力を持っていた。



俺はその家の、『次男』として生まれた。



こういう家は伝統と格式を大事にするから、長男が家を次ぐってゆーのは当たり前の思想。



兄は、すごく聡明で親戚たちからの期待を常に背負っている人だった。



だから、だと思うけど。


兄の俺に対しての当たりは異常なほどに強くて。



普段の素行は完璧でいないといけないから、殴ったり、暴言を浴びせたり、と、弟の俺を傷つけることでしかストレスを解消できなかったんだろう。



今になったら兄の気持ちもよく分かる。