「ねえ咲良、本当になにも言われなかったの?」

「うん、委員会の話をしてただけだよ」


帰りの会のとき、おそるおそるという様子でななちゃんが確認してきた。

凪くんからはなにも言われてないって何回も説明してるけど、よっぽど漫画部が廃部になるのが怖いと見える。


あんなに人気のある凪くんと朝光くんのカップル漫画が書いてるってバレたら、怒られるのを怖がるのも無理がないよね。



「は〜、よかったぁ」


胸を撫で下ろすななちゃんと一緒に教室を出る。


「あ、今日部活あるんだった。ふふ、相川くんと話せたから皆に報告していっぱい描けそう……!ばいばーい」

「うん、えっと、頑張ってね……?」

ななちゃんは漫画部の活動があるみたいで、教室は向こうの校舎だから階段ですぐにお別れ。


手を振ってゆっくり歩きだすと、階段の先に人影があるのが見えた。


どくん、と跳ねる心臓。