「先輩方の背中は、わたしたちの憧れです——」

今回の原稿は、あいさつの定型じゃなくて気持ちをのべるところからはじまる。
そうしたほうがリアルな手紙っぽくて感情をゆさぶるってなんとなくわかるから。

アユちゃんはわたしの考えた文章を暗記するだけじゃなく、声の強弱をつけてとてもドラマチックに読み上げてみせた。
こういうところ、ひとの心をつかむのが上手くて……才能なんだと思う。

「はぁ……さっすがアユだねー」
「かわいくて生徒会長であんなに文才があるなんて」
「本当に自慢の友だちでしょ、空」
クラスメイトがわたしに笑いかける。

〝あんたとはぜんぜんちがうよね〟とでも言いたげに。


わたしは、こうやってみんなの心を手に入れていくアユちゃんが怖い。