「そろそろ出発するぞ」



自室として使っている部屋の、あまり活用したことはなかった机の上。

飾られたふたつの遺影としばらく見つめ合っていると、ノックせずに入ってくる師匠。



「本当にこの人たちが…、私のお父さんとお母さんなんだよね…?」


「…ああ。おまえは1歳だったからな」



顔立ちだけでなく性格も似ているところがあると師匠は言ってくれたけれど、自分ではやっぱり分からなくて。


こうして写真を見たとしても家族には思えない。


私が1歳……。

ということは、1年間は家族で過ごしていたのだろうか。



「今のお前とそこまで歳も変わらねえから、実感が湧かなくて当たり前だ」


「…うん」



親という感覚がしない。

どこか近しい年齢のお兄さんとお姉さんを見ている感じ。


娘にそう思われていると知ったら、天国にいるお父さんとお母さんは悲しんじゃうかも…。