「いいだろう」



悩む素振りなくうなずいた学校長。

理由は、そのあと続けられた言葉のなかにあった。



「その代わり、失敗すればエーテル国が終わるものと思え」



成功の対価が大きいぶん、失敗した場合の対価も大きいということ。

生半可な気持ちでは、国が終わるということ。


これは国の平和を背負った戦い。



「すごいな……、S級魔法士は…」



安全な場所で休ませると言って、眠る江架を抱えながらワープ魔法を創った彼へと。

無意識にもローサが言って引き留めた。



「遅くなったが、俺はレオンハルト。ジジイの孫だとかS級魔法士だとか、そんなモン俺にとってはどうだっていい」


「じゃあどうして、あなたがそこまで…」



そこまでするんだ。

少女のために彼はS級魔法士という称号を得たんじゃないかって、僕たちに思わせてくるほど。




「江架の───…兄貴だからだよ」




腕のなかに抱えられた少女が赤ん坊に変わって、大切そうに抱えた男が少年に変わった。

そんなふたりは、やっと会えたことに嬉しくて泣いているように見えた。


こうしてS級魔法士のもと、僕たちの特訓の日々は始まる───。