「車に関しては、わざわざリムジンに乗ってるのは合理的理由があるだろ。車はある程度大きい方が乗り心地もいいし、万一の事故でも怪我の確率が下がって安全だからね。あと、あれは防弾仕様にもなってるからね。経営者として、安全の確保にはお金をかける意味がある。メリハリってことかな」

 選べる自由があるっていうことなんだろうな。

 こうして話をしてみれば、二人でちゃんとやっていけそうな気がする。

 それだけでも、ちゃんと共通点があるってことなんだろう。

「ねえ、でも、選べるときに、下の基準に合わせると陰口をたたかれたりしない? 落ちぶれたとか言われたり、これまで付き合いのあった人が離れていくとか」

 蒼馬がおいしそうにお茶のおかわりを飲み干して史香の肩を抱き寄せる。

「そういう相手は、むしろ、離れてくれた方が楽かもな。俺は史香がいてくれれば、どこででも生きていけるよ」

 な、何言ってんの、急に。

 蒼馬は何も気にしていないかのように続けた。

「それがたまたまベリが丘だっただけさ」

 見つめ合う二人の距離が次第に縮まり、史香は目を閉じた。

「愛してるよ、史香」と、蒼馬が髪をかきなでる。

 キスと一緒に蒼馬の言葉がすうっと染みこんできて、心があたたかくなる。

「ねえ、蒼馬」

「ん?」

「私も、愛してるからね」

「ありがとう。うれしいよ」

 もう一度口づけてから蒼馬が耳元でつぶやいた。

「俺も安心したよ」

 二人は狭い部屋で、頬を寄せ合いながらお互いのぬくもりを感じ合っていた。