青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました

 そんなふうに考えていたら、里桜がまた思いがけないことを言い出した。

「史香さんみたいなお姉ちゃんがいたら良かったのになって思っちゃいました」

 ――お、お姉ちゃん?

「だって、きっといつだって私の背中を押してくれただろうから」

 ああ、かなわないな。

 こういう素直なところか。

 人を引きつける魅力。

 この人は天性の女優なんだな。

 と、そこで里桜がうつむきながらつぶやいた。

「史香さん、今日、泊まっていっていいですか?」

「家とか事務所の人、心配するんじゃない?」

「連絡しておけば大丈夫ですよ」

 そうなのかな。

「私、友達の家とかにお泊まりしたことなくって」

 なら、なおさらまずいんじゃないの?

「子供の頃、友達の家に遊びに行くとかもなくて、蒼ちゃんのところだけだったな」

 お金持ちとか、有名人って、なんか窮屈そうだな。

 今でこそコミュ障気味だけど、史香は小学生くらいまでは近所の友達の家に入り浸っていたし、茶摘みの手伝いなんかにも行ったりしていたものだ。

「じゃあ、ちゃんと連絡はしてね」

「はーい」

 さっそく里桜がスマホを取り出すので、史香も佐久山に迎えは必要なくなったとメッセージを送信しておいた。

 里桜が史香の方へ回ってきて顔を寄せる。

「はい、撮りまーす!」

 ちょ、え、待って。

 虚を突かれた顔が連写される。

 写真のデータをもらうついでに連絡先も交換してしまった。

 なんでこんなことになってるんだろう。

 私、恨まれてるんじゃなかったっけ?

「ねえ、史香さん、お風呂に入る前にメイクしてみません?」

「なんで?」

「史香さんって、あんまりメイクとか練習したり、動画とか見て研究したりしたことないでしょ」

「うん」

 そもそも興味がないし、やっても無駄だと思うからだ。

 よく見せようとするより、社会人として失礼のないようにしておく程度でいい。

「肌に合わないとか、心配だからやめておく」

「大丈夫ですよ。今使ってるのを見せてください」

「たいしたものないんだけど」

 実際、自分の肌に合うことを確かめてある基本的なものしか使っていない。

「史香さんって、眉の入れ方が上手ですよね」

 おっと、いきなり褒める方から入るタイプ?

「だけど、アイシャドウが控えめすぎて、せっかくの良さが消えてるんですよね」

 説得力ありすぎて聞き入ってしまう。

「もっとはっきりめの方が、素材がいいから映えますよ。丸目より切れ長系かな」

 なんか目立ちすぎると落ち着かないような気が……。

 里桜の手つきが早すぎて全然覚えられそうにないけど、自分がしたことのないやり方は参考になる。