「狭くてごめんね。クッションあるから使ってね」
フローリングの床にはホットカーペットを敷いてある。
里桜がベッドを背にして座りながら、無言であたりを見回している。
自分の部屋と比べているんだろうか。
張り合うつもりはないけど、恐縮してしまう。
幸い、洗濯物は二日に一回で今日は干していかなかったから部屋はそれなりに整頓されている……んじゃないかな。
「今、すぐに温かい物作るね」
鍋に水を入れてコンロにかける。
冷蔵庫から卵を取り出して溶きほぐしておき、沸いた鍋に粉末のコーンポタージュを二人分入れ、よく溶かしてから卵を投入。
かき混ぜたところで火を止めてカップに移す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
両手で湯気の立つカップを持って口に運ぶ里桜を見ていると、CM撮影に立ち会っているような気分になる。
「うわあ」と、満面の笑顔がこぼれる。「すごくおいしいですね」
「良かった」と、史香も笑顔を返す。
「やわらかい茶碗蒸しみたい。コーンポタージュと卵って組み合わせ、考えたことなかったな」
「コーンと卵の中華スープだってあるから」
「そういえばそうですね」
実際のところは牛乳ベースと鶏ガラスープでは全然違うんだけれども。
「心が冷えてる時は体を温めると落ち着くでしょ」
話をしている間にレンジで冷凍ご飯を温め、やかんにお湯を沸かしておく。
冷蔵庫の鮭フレークと生姜のチューブを出しておき、急須にお茶の葉を入れる。
「史香さんも一緒に飲みましょうよ」
「私、猫舌なの」
「ええ、そうなんですか」
「先に飲んでて。今、ご飯作ってるから」
「なんでも作れてすごいですね」
そんなたいしたものじゃないんだけど。
解凍したご飯をお茶碗に分けて、鮭フレークにショウガをのせてお茶を注ぐ。
お茶漬けにはワサビが普通だけど、寒い季節にはショウガであったまるのもいい。
「はい、どうぞ」
「わあ、これってお茶漬けですか?」
「うん。食べたことないの?」
さすがセレブ。
「うちの母、歌劇団のトップスターだった頃にストレスで拒食症になったらしくて、食事にうるさくって。ちゃんとした料理しか食べさせてもらえないんです」
と、ハッとしたような顔になってあわてて手を振る。
「あ、あの、ちゃんとしたって言い方、ごめんなさい」
「ううん、気にしないで」と、笑顔でレンゲを渡す。「ある物しかないから、こちらこそごめんね」
「でも、ある物で作れちゃうって憧れます。私、ふだん自分では料理しないんで」
湯気の立つお茶漬けをレンゲですくってハフハフと口に運ぶ。
「うーん、おいしい。お茶が甘くて香りもいいですね。これ、すごくいいお茶ですよね。お茶が好きなんですか?」
「静岡出身だからね。この前帰省した時にもらってきたの」
「ああ、そうなんですか。すごくおいしいですね」
それからしばらく二人は無言のままあたたかいご飯を食べた。
フローリングの床にはホットカーペットを敷いてある。
里桜がベッドを背にして座りながら、無言であたりを見回している。
自分の部屋と比べているんだろうか。
張り合うつもりはないけど、恐縮してしまう。
幸い、洗濯物は二日に一回で今日は干していかなかったから部屋はそれなりに整頓されている……んじゃないかな。
「今、すぐに温かい物作るね」
鍋に水を入れてコンロにかける。
冷蔵庫から卵を取り出して溶きほぐしておき、沸いた鍋に粉末のコーンポタージュを二人分入れ、よく溶かしてから卵を投入。
かき混ぜたところで火を止めてカップに移す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
両手で湯気の立つカップを持って口に運ぶ里桜を見ていると、CM撮影に立ち会っているような気分になる。
「うわあ」と、満面の笑顔がこぼれる。「すごくおいしいですね」
「良かった」と、史香も笑顔を返す。
「やわらかい茶碗蒸しみたい。コーンポタージュと卵って組み合わせ、考えたことなかったな」
「コーンと卵の中華スープだってあるから」
「そういえばそうですね」
実際のところは牛乳ベースと鶏ガラスープでは全然違うんだけれども。
「心が冷えてる時は体を温めると落ち着くでしょ」
話をしている間にレンジで冷凍ご飯を温め、やかんにお湯を沸かしておく。
冷蔵庫の鮭フレークと生姜のチューブを出しておき、急須にお茶の葉を入れる。
「史香さんも一緒に飲みましょうよ」
「私、猫舌なの」
「ええ、そうなんですか」
「先に飲んでて。今、ご飯作ってるから」
「なんでも作れてすごいですね」
そんなたいしたものじゃないんだけど。
解凍したご飯をお茶碗に分けて、鮭フレークにショウガをのせてお茶を注ぐ。
お茶漬けにはワサビが普通だけど、寒い季節にはショウガであったまるのもいい。
「はい、どうぞ」
「わあ、これってお茶漬けですか?」
「うん。食べたことないの?」
さすがセレブ。
「うちの母、歌劇団のトップスターだった頃にストレスで拒食症になったらしくて、食事にうるさくって。ちゃんとした料理しか食べさせてもらえないんです」
と、ハッとしたような顔になってあわてて手を振る。
「あ、あの、ちゃんとしたって言い方、ごめんなさい」
「ううん、気にしないで」と、笑顔でレンゲを渡す。「ある物しかないから、こちらこそごめんね」
「でも、ある物で作れちゃうって憧れます。私、ふだん自分では料理しないんで」
湯気の立つお茶漬けをレンゲですくってハフハフと口に運ぶ。
「うーん、おいしい。お茶が甘くて香りもいいですね。これ、すごくいいお茶ですよね。お茶が好きなんですか?」
「静岡出身だからね。この前帰省した時にもらってきたの」
「ああ、そうなんですか。すごくおいしいですね」
それからしばらく二人は無言のままあたたかいご飯を食べた。


