図書室は私にとっては宝物の宝庫だ。
 人の作った物語はどうしてこんなに魅惑的なのだろうか。
 本を読んでいると、どんな悲しいことも、虚しい思いも、忘れられる気がする。
 そういう意味で、本は私の支えだった。

 私は誰もいないであろう午後の授業中を狙って図書室にやってきた。
 課題のプリントはある程度終わらせたし、決してサボりではない。
 頑張った者に与えられるべきご褒美なのである。

 とりあえず図書室内を巡る。
 そして、目についた本を一冊本棚から抜き取り、手にとって静かなパラパラとめくった。

『自衛隊の3部作シリーズ、砂糖の街か』 

 あらすじを読み、面白そうだな、と感じてその本を持ち席についた。
 私は本を読むのが早いため、一時間で1、2冊は読むことができる。
 表紙を眺め、本を開く。

 そして、読み進めること数十分。
 早くも読み終えてパタンと本を閉じた。

『面白すぎる…!』

 大声は出せなかったけれど、出したいくらいに興奮していた。

 待って、この本、めちゃくちゃ面白い!
 切ないけど、ラブコメ感もあって、ストーリーの展開も完璧だし。
 分厚めの本なのに読みやすいし。

 早く続きを読みたくて、私は立ち上がり、次の巻を取りに行った。