「へえ、そんなことが……」


 翌朝、登校するなり、わたしはすぐに萌ちゃんに、昨日のことを報告した。

 わたしが、たびたびクスノキに話しかけたり、歌ったりしていることを知っているのは、萌ちゃん、ただひとり……だったのに。

 花宮くんに知られちゃった……。


「でも、そんなに恥ずかしがることないじゃん? 芽衣は歌、上手いんだからさ」


 萌ちゃんはなぐさめるように言うけれど、笑いをこらえているのか、顔がぷるぷるしている。


「ひとりきりで歌うなら……の制限つきだけどね。……萌ちゃん、笑うの我慢してるでしょ?」


 わたしがじとーっと見つめると、萌ちゃんはとうとう噴きだした。


「ぷはっ! あははは!」

「もうっ! 笑わないでよ! 本気で恥ずかしかったんだからね!」


 わたしが頬をふくらませると、萌ちゃんは笑いながらあやまった。


「ごめん、ごめん。だってさ、状況を思い浮べたら、おっかしくてさ~」


 萌ちゃんは、よく笑う、とっても元気で明るい女の子だ。

 陸上部で短距離走をやっていて、短いボーイッシュな髪形がよく似合っている。