帰り道。

 ふたりで並んで歩いていたら。


「芽衣。今さらなんだけどさ……」


 おもむろに、花宮くんが切りだす。

 この二週間もの間に、花宮くんは、わたしを下の名前で呼ぶようになっていた。


「あのクスノキに、どんな思い入れがあるんだ?」

「えっ……?」

「いや、一度きいたことあったけど、答えをききそびれてたと思って……」


 そういえは……ちゃんと話したことはなかったかもしれない。

 でも、今だったら話せるよ。


「歌詞で気づいたと思うけど、天国にいる、わたしのパパとママにむけた歌なんです」


 わたしは、クスノキの前で歌うようになった事情をすべて、花宮くんに話した。


「そうか……。おれには親父も姉貴もいるし、芽衣のほうがずっとつらかっただろうな」


 花宮くんの眉が下がったのを見て、わたしはぶんぶんと首を横にふった。


「ううん! つらいとか、そういうことはなかったんです! 住んでた家に、ママのお姉さん――伯母(おば)さん夫婦が移ってきてくれて……。おかげで小学校を変わる必要はなかったし、わたしのことを大事にしてくれました。伯母さん夫婦には子どもがいなかったし、本当の娘のように育ててくれたんです」


 わたしも、伯母さん夫婦にはすごく感謝してるし、本当の両親だって思ってる。

 だけど……。