すると、玄関のドアが勢いよく開く音がして。

 ドタドタと、階段をかけあがってくる足音――。

 そして、部屋に飛びこんできたのは、市内の私立高校の制服に身をつつんだ、茶髪の派手な女の子。


「こんちはー。芽衣ちゃんでしょ? 樹生から話はきいてるよー」


 わわっ、花宮くんのお姉さんだ!


「あたし、乃々果(ののか)っていうの。よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします!」

「やーん、緊張してるぅ。めっちゃかわいい!」


 ノリのいいお姉さんが抱きついてきた。

 ふわりと、イイ香りが鼻をくすぐる。


「なにしてんだよ、姉貴!」


 ジュースを持ってきてくれた花宮くんが、げんなりした顔で立っていた。


「作曲を手伝ってくれって言ったじゃん!」

「言ったけど……こんなに早く帰ってくるとは……」


 口ごもる花宮くんを見て、乃々果お姉さんはニヤリとして、

「なーに、お邪魔だった?」

「べ、べつにそんなこと言ってねーだろ!」


 にわかに部屋の中はにぎやかになった。

 姉弟のやり取りに、キモチがほっこりする。

 わたし、ひとりっ子だから、こういうの憧れちゃうなぁ。