嵐のように、時間が過ぎていった。

 練習のため、ほぼ毎日、花宮くんの家に通うようになったんだ。

 花宮くんのお家はとっても広くて、お父さんのものだというギターが何本もあって、防音室まであったの!

 はじめて花宮くんのお家にお邪魔した日――。


「ジュース持ってくるから、ちょっと待ってて」

「はい……」


 二階の花宮くんの部屋に通されて、ひとり待つ間、わたしは緊張で倒れそうになっていた。

 花宮くんのお母さんが亡くなっているというのは、あらかじめきいていて。

 レコード会社で働いているというお父さんは家にはいないし、お姉さんもまだ帰ってない。

 ……ということは、この家のなかで、わたしと花宮くんのふたりきりっ……!?

 ドキドキしすぎて、心臓が痛いくらい。

 うぅ……萌ちゃんについてきてほしかったけど、今日は陸上部の活動日だし……。

 部屋を見まわすと、壁にアコースティックギターが立てかけてあったり、無造作に漫画が置いてあったり、服が脱ぎちらかってたり。

 男の子の部屋に入るなんて、生まれてはじめてだよ!