「花宮のやつ、イイ気味だよ。大してヤル気もないのに、ソツがないプレーするから細谷先生もレギュラーにしたけど……」

「アイツ女子にモテるからな~。今ごろデートでもしてんじゃね? いいよな~、部活休めて」


 顧問の細谷先生に、しばらく休めって言われたけど、練習の様子を見にいったら。

 先輩たちが、おれの陰口たたいてるのをきいてしまったんだ。

 それで、すべてバカらしくなった。

 たしかにサッカーはそこまで好きじゃなかったけど、いつか熱中できるだろうと、必死だったんだ!

 女子に告られても、「今は部活に集中したいから」って、断ってたんだぜ!?


 もう、どうでもよくなった。

 これからは恋愛ってやつに目を向けてみるかな。

 ドラマみたいに、我を忘れるくらい、だれかに恋してみたいな。


 ――大楠公園のクスノキのおかげで、父さんは母さんと出会えたんだぜ。


 ふいに、親父が昔、教えてくれたことを思いだした。


「お姉ちゃんにはナイショな」


 そう言って、こっそり教えてくれたっけ。

 あれは小学四年生のころだったか。