おれ――花宮樹生は、ずっと熱中できるものを探していた。

 親父は昔、バンドマンだったそうで、今でも趣味でギター弾いてるから、家には防音室があったりする。

 母さんはフルート奏者だったらしいが、おれが物心つく前に病気で死んでしまった。だから、おれと、2コ上の姉貴は、男手ひとつで育てられたんだ。

 姉貴は、親父の影響をモロに受けて、ギターにのめりこみ、高校に入ってバンドを組んだ。

 おれもそれなりに音楽に興味をもったし、親父や姉貴に教わったりして、アコースティックギターをたまに弾いたりする。

 でも……その程度。


 小学生のとき、親父にせがんで空手や水泳をやってみたり、あびるように本を読んでみたりしたけど、しっくりこない。

 中学校に上がってサッカー部に入ったけど、そこまで熱くなれなかった。

 レギュラーの座をつかんですぐ右ひざをケガしてしまって、秋季大会を棒にふったときも、正直そこまで悔しくなかったり。