「芽衣からきいてたけど、意外ねぇ。花宮くんがギター弾けるなんて」


 萌ちゃんが言うと、花宮くんは苦笑いを浮かべて。


「姉貴がバンドやってて、たまに教えてくれるんだよ。親父も昔、バンドマンだったからな。三人で弾くこともあるぜ」


 へえ、そうだったんだ! 音楽一家なんだ?


「花宮、応援に行ってやるよ」

「わたしも、わたしも!」


 遠巻きに見ていたクラスメイトたちがあつまってきて、激励の言葉をかけてくれる。


「フン、なによ」


 乙葉さんたちは、不服そうに離れていった。

 チャイムが鳴って、教室を出ていこうとした花宮くんが、きびすを返して。


「そうだ! 用件を忘れるトコだった! 咲真! 今日、いっしょに帰るからな。おれの家に来いよ」

「えっ……?」


 突然のことで、反応できないわたし。

 女子が色めきだち、男子が冷やかすように口笛を吹く。


「作曲するんだよ! 歌詞を完成させといて! じゃあな!」


 それだけ言うと、花宮くんは風のように飛びだしていった。