萌ちゃん以外で、わたしに話しかけるひとは少ないけれど、今日は朝から、男子も女子も、よく話しかけてくる。

 激励――というか、冷やかしてくる子が大半で。

 でも、それはまだいいほう。

 にらんでくる女子が、ちらほらいて。

 花宮くんのことが好きな子たちなんだろうけど。

 こ、こわすぎる……。


「咲真さん、ちょっといい?」


 めずらしく声をかけてきたのは、クラスの人気者の乙葉(おとば)愛華(あいか)さん。うしろには、いつもいっしょにいる取り巻きの水野さん、根本さんもいる。

 乙葉さんは長い髪をツインテールにしていて、整った顔立ちの美少女。

 ダンスが得意で、動画にしてアップしたものが、けっこう人気だそうで、いつも自慢げに話しているのが耳に入ってくる。
 
 つねに自信たっぷりで、自己主張が強い子だ。

 わたしの苦手なタイプ。

 もっとも、乙葉さんには、わたしなんか目に入らないらしく、今まで話しかけられることなんてなかったけれど……。


「花宮くんといっしょにアピールコンテストに出るという噂は、ホントなの?」


 たずねてきた乙葉さんの目は……笑ってない。


「は、はい……。ホントです……」


 おどおどしながら返事すると、乙葉さんの目つきがするどくなった。