「あの……」


 わたしは立ちあがって、口を開いた。


「向き不向きは、自分で決めます」


 乾先生に言い放つと、わたしは隣の花宮くんを見上げて、

「わたし……咲真くんが誘ってくれて、本当はうれしかったんです。だから……アピールコンテストに出てみます」

 って、宣言してしまった。


「えっ……ホントに!?」


 怒りの色が浮かんでいた花宮くんの表情が、みるみる、喜びに輝くものになった。

 はぁ。

 とんでもないこと言ってしまったような……。

 だけど、もう引っこみがつかない。

 わたしは、乾先生に向きなおって。


「だからわたし、かわいそうなんかじゃありません。失礼します」


 ぺこりと頭を下げて、

「行きましょう」


 花宮くんをうながし、ぽかんとしている乾先生を残して、部屋を出る。


「「わっ」」


 生徒指導室の引き戸のそばにいた女子ふたりが、おどろいたように肩を()ねあげた。

 たしか、一組の女の子たちだ。

 わたしに意味ありげな視線を送ってから、あわてて走りさっていく。


「なんだ、アイツら?」


 小首をかしげた花宮くんは、よくわかってないみたい。

 きっと、あの子たちは、わたしと花宮くんが呼びだされたのを知って、聞き耳を立てていたんだと思うの。

 花宮くん、モテるものね。

 うぅ、なんだかイヤな予感がするよ。