「咲真も知らなかったのか?」


 乾先生は次に、わたしにたずねたけれど、その()すくめるような視線に、身体がこわばる。

 ほら、すっかり不機嫌になってるよ!

 しおらしくしていれば、無駄に怒らせたりしないのに……。

 わたしは、なんとか声をふりしぼって、

「……いえ、知ってました……」

「知ってて、なんでおまえまでいっしょになって屋上に行った?」

「…………」


 言葉につまっていたら。


「だからー、おれが話あるからって、咲真を連れていったんですよ。咲真は何も悪くないんです」


 口をはさんだ花宮くんが、わたしをかばってくれた。


「話……? 何の話だ?」

「ちょっとした相談事ですよ」

「おまえが咲真に何を相談するんだ?」


 いぶかしげな表情で追及する乾先生。

 わたしたちにまったく接点がないから、不思議に思うのは仕方ないけれど。


「べつに何でもいいじゃないですか」


 花宮くんのポーカーフェイスがくずれて、投げやりな口調になった。


「なんだ、その態度は!」


 乾先生が声を荒げたので、わたしは思わず割りこんでいた。


「あ、あのっ!」


 よせばいいのに、わたしの口は止まらない。