「屋上が立ち入り禁止になったこと、知らなかったとは言わさんぞ」


 乾先生が腕組みしながら、ギラリとするどい眼差しをむけてくる。

 放課後、わたしと花宮くんは、生徒指導室に呼びだされていた。

 並んで座らされたわたしたちは、まるで警察につかまった容疑者のよう。

 こんなことになるなんて……。

 不安でいっぱいで、手が少しふるえている。

 今まで学校の先生には「声が小さい」と注意されることはあっても、怒られるなんてことは滅多(めった)になかった。目立ちたくないから、真面目にルールを守るようにしてきたし。

 こんなことになったのは、花宮くんのせいだ。

 うらめしく思うキモチがわきあがってきて、ふるえる手をぎゅっと握りこむ。


「あー、知らなかったです」


 花宮くんが感情のこもってない声で答えると、乾先生は眉間にしわを寄せた。


「……花宮、ホックをしめろ」

「これ苦しいんですよねー」


 ため息をつきながら渋々ホックをしめる花宮くんを見て、乾先生の眉間のしわが深くなった。

 わわっ、そういう態度はダメだってば!

 乾先生は大柄で、怒ったらこわい体育教師だ。