花宮くんが何を言っているのか、わからない。


「三人までだったら、いっしょに出られるから」

「あ、あの、そうじゃなくて……」

「公園で歌ってたやつを頼むよ。あっ、伴奏は心配すんな。おれ、一応、アコギ弾けるから。そんなに上手くないけど」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


 暴走気味の花宮くんを、あわてて止める。


「……ん? どうした?」


 こっちが言いたいよ!


「どうして、そのような話に……?」

「おれがフツーにスピーチしたって優勝できるとは思えねーし。ひざをケガしてるからダンスは無理だし、漫才は……お笑いのセンス無いからパスだ。……となると、咲真の歌声に頼るしかねーんだよ」

「ぜったい無理です!」


 音楽の授業のテストでふるえてしまうわたしが、市民ホールみたいな立派な舞台で、まともに歌えるわけがないよ!


 ――そのときだった。


「おまえら、何やってるんだ!」


 ふり返ると、生徒指導担当の(いぬい)先生が、鬼のような形相(ぎょうそう)で仁王立ちしていた。